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みくさんぽ。

False Island(通称:偽島)の更新記録とかを書いていく日記。気が向けば普通に日記書いてるかも。
2024
11,23

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2010
03,11
今回長い!


「・・・それで、お前は黙ってアイツらを他の奴のとこに行くのを見守ってたって事か」
無言が続いた。
シスターは、もってたワインを一口飲み視線を逸らし、なんだか罰が悪そうに俺の方を見ようともしない。
雑種と妖精が居なくなったせいか妙に静かだ、あの二人が居ないだけでここまで静かになるのか。
俺は、気まずい空間に耐えきれず、黙って立ち上がり近くにあった湖の畔に行き、いつもの儀式を始める。
静かな湖に自分の左手を斬った音が響く。
儀式って言うのは、左手の甲の血を伸ばし、自分の術式を描いて祈る。
この儀式は物心ついた時から一度も欠かしたことが無い。
初めは自分の手の甲を切ることが痛く怖かった、が。今となっては慣れたものだ。
この儀式は爺様が強制的にさせているのだ。
儀式をすることで神が俺に力を貸してくれる。いや、力を貸すための対価と言った方が良いかもな。
ま、本当のことを言うと神の力が俺に宿るなんて感じない。ただ、気分的な問題、自分に自信が持てるそんな程度のものだった。
儀式中は妙に背中の刺青が疼く。
「・・・さて、本日の儀式も終わり。と。」
俺は呟き。水をくみ左腕に注ぎ血を流していく。
なぜか、儀式の時につけた傷だけはすぐに治癒し傷がみるみる塞がっていく。
考えたことはなかったけど不思議なもんだな。
儀式は終わったが気まずいので正直キャンプ地に戻りたくない。
はぁ・・・ここでうだうだしてても一緒だな。
いざ、キャンプ地に戻ると歌声が聞こえてきた。
俺は茂みに隠れ顔を覗かせ歌声の方を見るとどうやら、シスターの歌声らしい。
焚き火かアルコール飲んでせいかどうかは、わからないが頬はほんのり桜色に染まり、月を見つめて歌っている。
・・・へぇ、あいつがさつな癖に綺麗な声だな。たしか、この曲聖歌の「Awesome God」だよな。
俺はそのままシスターに気付かれないよう彼女の死角へ静かに移動し木の背に寄りかかった。
あいつの信仰する宗教を信仰しようとは思わないが、やはり音楽は素晴らしい。
・・・そういえば、この島に来てもう結構経ったな。音楽を耳にするのも随分と久しぶりだ。
そのまま何分過ぎたか分からないがシスターの歌声は止み、かわりに瓶の蓋が開く音がした。
あいつ、またワイン飲み始めやがったな・・・。
俺は呆れながら立ち上がるとベタにも小枝を踏みつけてしまった。
おいおい、なんだこのベタな展開。王道もいいとこじゃねえか。
「ん・・・チェスカか?」
シスターの声がした。その声にはさっきのやさしい歌声とは打って変わり、わずかな緊張のこもった感じがした。
ひょっとして、モンスターが現れたと勘違いしてるのか?
俺は、観念して、彼女の反対側に座り焚火にあたった。
「盗み聞きとは、あんまり趣味が良いとは思わないな」
歌を唄い酒を飲んでリラックスしたのか少し表情が和らいでる気がする。
「フン、『たまたま』声が聞こえたから聞いてただけだ、あと、この俺様の素晴らしい高尚な趣味を心配する必要は無いっての。
それより、お前意外にも歌上手いんだな。ほんの少し見直したぞ、蟻の巣ほどだけどな」
「へぇ、あんたに、この音楽の良さが分かるなんざ思いもしなかったな」
こ、こいつ、ほんといちいちムカつくな・・・。
キッと睨み付けるとシスターの顔は心なしか少し嬉しそうだった。
・・・ああ、こいつ確実に酔ってやがるな。
「ハンッ、お前が聖歌を歌えるとは思いもしなかったよ」
「へぇ、聖歌って分かったのか。てっきり、あたしは、どーせ大管弦楽みたいな派手な音楽しか聞かないだろうから、聖歌なんてわかんないと思った」
たしかに、好みはどちらかと言うと派手な音楽だけど、こういう落ち着いた曲も好きなんだよ。
まったく、失礼なやつだな・・・。
「ハハ、それは悪かったな。それより、あんたはどこに行ってたんだ?・・・って、手袋に血が染みてるけど、それどうした?」
げっ、傷口まだ治りきってなかったのか・・・。まあいい、適当にはぐらかすか。
「ん・・・結構前から傷あった開いたみたいだな。ま、これくらい大丈夫だろ。それより、お前疲れてんだろ?とっとと寝ろ寝ろ」
上のジャケットを脱ぎ、近くの木にかけながら言った。
「そんな傷無かったはずだけどな」
そういい、シスターは無理やり俺の手袋を無理やりとりとろうとした。
「お、おい勝手にとんな! 大丈夫だから、もう寝かせろ。俺様は眠いんだよ。寝不足で美しいお肌が荒れるだろ」
こいつ、本当にめんどくさい性格だな。
バツが悪くなったので俺はシーツにくるまりながら、硬い地面に寝転がった。
ベッドでゆっくり寝たい・・・。
「・・・お前、嘘も下手だよな」
え、俺嘘下手なの?
お、俺様そんなもん気づかなかったぞ!?
「たとえば・・・名前も嘘ついてるんじゃないか?」
「あンッ!?」
思わずビクっと跳ね起きちまった。
な、なんでバレたんだ・・・?俺、誰にも言ってないぞ・・・?
「あ・・・えっと、ごめん。盗み見するつもりはなかったんだけどさ、アンタの短剣の柄にFranziska=Schwarzって、彫ってあったから」
自分の屋敷から持ってきた、初め使ってた護身用の装飾してある短剣の柄を見ると、たしかに書いていた。
・・・盲点だった。
そう言えば、名前彫ってあったんだっけ。
ちなみに、この剣は儀式用に子供の頃爺様にもらった短剣だ。
って、あれ?今も持っていってたのに、いつ見たんだ?
「あぁ、それもごめん。昨日、あんたが寝てるときに目に入ったからな」
ああ、なるほど。そういう事ね。たしかに、寝るときは枕元にいつも置いてあるし見られても不思議じゃない。
「隠す割にツメが甘いんじゃないか?でも、なんで、偽名使ってるんだ?っていうか、なんて読むんだ、コレ?フラン・・・・ジ・・・??」
ああ、うちの国の綴りじゃ読めないのか。
「フランチェスカ」
「へぇ、綺麗な響きで良い名前じゃんか。別に隠す必要ないと思うが」
フランチェスカのどこがいい名前なんだ。こいつ、趣味悪いな。
「おいおい、なに自虐してんの。親からもらった名前だろ? もっと大切にしろよ」
親からもらった名前。って、付けてくれたのは爺様だっての。
ていうか
「フランチェスカなんて名前、女性名だろ。俺は男だ、男性名が欲しかったんだよ」
「・・・・そんな事気にして隠してたって訳?」
違う、いや違わない。たしかに嫌だけどそんな事じゃない。
「お前、ダンテの神曲も読んだことあるか?」
「なんで、そこで神曲が出てくるんだよ・・・」
おいおい、まさか知らないのか。
これだから、学の無いやつは・・・。
「うっさい、悪かったな! 別に生きてく上では必要ないだろ?」
優しく聡明で素晴らしい俺が仕方ないので説明してやろう。
「ダンテ神曲地獄篇第五歌。実の親に親の都合で他の家に嫁がされ、騙され。嫉妬に狂った男に自由を知らぬまま殺された悲劇の女の名前言ってみろ」
シスターは顎に手をやり必死に思い出そうとしている。読んだこと無いんだろ。いくら考えても無駄だぞ。
いくら待っても答えは出なさそうなので正解を切り出した
「・・・答えは、フランチェスカ。どっかの誰かと同じ名前だよ」
その答えを聞きシスターは少し申し訳なさそうな顔をした。
こいつ、すぐ顔に出て本当に分かりやすい奴だな。
さっきまでの和やかな雰囲気から一変して再び気まずい空気が流れた。
結局、また居心地悪くなるのかよ。
「・・・しかたないな、本名もバレたし改めて、自己紹介してやるよ」
そこで、俺は皮肉交じりに2度目の自己紹介をしてやった。
「俺は、シュバルツ家嫡男、フランチェスカ=シュバルツだ。チェス様、ご主人様、主様、って呼ぶことを許可してやるよ『下僕』」
下僕という言葉を聞きシスターは出会った時のように怒った顔をした、が、心なしか今回は目が笑ってる気がした。
あれ、バカにされてる?
クソッ、結局こうなるのかよ!
すると、シスターも皮肉交じりに言い返した。
「ハイハイ。しかたないから宜しくしてやるよ、『俺様貴族様』。そんなことより、ほら。服とっと脱げっての!怪我治せねーだろうが!」
・・・まだ言ってやがるし。
やっぱ、俺・・・こいつ苦手だ。
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プロフィール
HN:
みく(ノイズ)
年齢:
35
性別:
男性
誕生日:
1988/12/28
職業:
大学生という名の自宅警備員
趣味:
読書 音楽鑑賞(メタル・クラシック・洋楽パンクロック)
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